こどもの便秘は頻度が高く、「よくある病気で、大したことがない」と考えられがちです。一過性であれば、その都度の対処で大丈夫ですが、1か月以上持続する場合は適切な治療介入が必要です。おなかのトラブルは意外と生活の質(QOL)を低下させます。便秘が続きお困りであれば、当院へお気軽にご相談ください。
以下では小児の便秘症を正しく理解して頂くためのポイントを解説します。
定義
「便秘」と「便秘症」という2つの用語があります。
便秘とは、便が滞った、または便が出にくい状態を指します。
便秘症とは、便秘の症状があり診療や治療の対象となる状態を指します。
こどもの便秘症は10%程度におきるとされており、珍しいものではありません。
分類
- 一過性と慢性 (経過による)
- 機能性と器質性(原因が他の併存疾患であるか否か)
病態
小児の慢性機能性便秘症では、「悪循環」が病態の中心にあります。お子さんが硬い便で排便時に痛みを感じると、便を我慢するようになります。我慢すると便はますます硬く太くなり、直腸が鈍感になって便意を感じにくくなる「悪循環」が起こり、便秘が悪化します。このサイクルを断ち切り、便秘の改善を目指すことが重要です。
便秘が起こりやすい時期は
- 離乳食開始
- トイレットトレーニング時期
- 学校入学後
診断基準
4歳未満と4歳以上で異なります
4歳未満の乳幼児の機能性便秘症の診断基準
1か月間に以下の7つの項目のうち2つ以上を満たすこととされています。
- 排便が週に2回以下
- 過去に過剰な便貯留があった
- 過去に痛みを伴う、または硬い便通があった
- 過去に大きな便があった
- 直腸に大きな便塊を触知
トイレットトレーニングが済んだ小児においては、以下の追加の基準を用いてもよい - トイレで排便スキルを獲得後、少なくとも週1回の便失禁
- 過去にトイレが詰まるくらいの大きな便があった
4歳以上の小児・青年期の機能性便秘症の診断基準
1か月間に以下の項目のうち2つ以上を満たすこととされています。
- 発達年齢が少なくとも4歳以上の小児で、トイレでの排便が週に2回以下
- 少なくとも週に1回の便失禁
- 過去に排便を我慢する(こらえる)姿勢、または過度の自発的便貯留があった
- 過去に痛みを伴う、または硬い便通があった
- 直腸に大きな便塊を触知
- 便器を詰まるくらいの大きな便があった
週に2回以下の排便回数は診断項目の一つに過ぎず、毎日排便があっても機能性便秘症と診断されるお子さんもいることに注意が必要です。
レッドフラッグスの確認
器質的疾患を示唆する危険兆候(レッドフラッグス)がないかを確認します。
レッドフラッグスがある場合は、専門医療機関へご紹介します。
レッドフラッグスとは
- 胎便排泄遅延(生後24時間以降)の既往
- 成長障害・体重減少
- 便秘症状以外の消化器症状(反復する嘔吐、下痢、血便)
- 肛門所見
- 腹部膨満
- 腹部腫瘤
- 脊髄疾患を示唆する神経所見や仙骨部の皮膚所見
機能性便秘症である場合、便塞栓の有無をまず評価します。
便塞栓が疑われる症状
- 腹部触診で便塊を触知する
- 直腸肛門指診で便塊を触知する
- 画像上、直腸に便塊を認める
- いきんでいるが、便が出ないと訴えがある
- 漏便がある
- 少量の硬便がある
- 最後の排便から5日以上たっている
便塞栓がある場合は、まず便塞栓を完全に除去することが重要です。便塞栓が除去できたら維持治療を行います。便塞栓がない場合は、維持治療を開始します。
治療目標は週3回以上の完全自発排便(適切な便性状で残便感等の排便周辺症状のない排便)になります。
治療薬
症状や年齢を考慮して、ポリエチレングリコール製剤、浸透圧性塩類・糖類下剤、整腸剤、刺激性下剤、漢方薬などを用いて治療します。治療前に便秘の経過が長かった場合、便塞栓を認めた場合は、薬により症状が改善し、すぐに中止してしまうと直ぐに再燃してしまいますので、経過をみながら薬の調整をしていきます。
トイレットトレーニング
無理なトイレットトレーニングは、便秘の原因になったり、便秘を悪化させたりすることがあります。トイレに行くのを嫌がって排便を我慢してしまうことも見られます。また、失敗したときに叱ってしまうと、子どもは理由が分からないまま「叱られたくない」という気持ちから排便を我慢するようになる場合があります。
幼児期のトイレトレーニングを始める際は、本人の発達段階(自分で歩ける、下着の上げ下げができる、ある程度コミュニケーションがとれる、トイレや排泄に興味を持ち始めている、人の真似をしたがる等)を十分に見極めてから行いましょう。便秘がある子どもは、まず治療を受けて規則的な排便習慣が身についてからトイレトレーニングを行うのが適切です。