小児の発疹症
小児では感染症により発疹が出現することが多いです。その一部では皮疹の性状や分布の特徴、経過中の皮疹の出現のタイミングなどで感染症の原因を特定できるものがあります。以下では、これらの特徴がある感染症をとりあげて紹介します。
まず、皮疹にはいくつかの種類があるため、皮疹の種類と特徴をまとめておきます。
紅斑
皮膚が赤くなる状態で、表面は平らで、圧迫で消退します。

丘疹
皮膚が小さく盛り上がった直径1cm未満のしこり。

水疱
透明な液体を含む小さな水ぶくれ。

膨隆疹
皮膚が境界明瞭に膨らんでいて、比較的すぐに消えます。

紅斑・丘疹型の皮疹が出る感染症
溶連菌感染症(猩紅熱)(小児の感染症の項もご参照下さい)
溶連菌感染症で、感染した溶連菌が発赤毒素を産生する時に、発熱、咽頭痛以外の症状として図のような紅斑性発疹が首、腋、鼠径部から出現して体幹、四肢へ拡大します。皮疹は少しざらついたような、サンドペーパーのような質感が特徴です。原因は溶連菌のため、抗菌薬で治療することで、菌が消失すると発疹は速やかに消退しますが、抗菌薬は7〜10間の服用が必要になります。
突発性発疹症
ヒトヘルペスウイルス6型または 7型による感染症で、6か月〜2歳頃が好発年齢です。臨床経過に特徴があり、3〜4日高熱が持続し、解熱後に図のような紅斑が顔、体幹、四肢に出現します。痒みなどはなく、融合傾向はありません。2〜3日で皮疹は消退します。このように、発症年齢と経過で診断される感染症です。
麻疹
麻疹ウイルスによる感染症です。発熱と程度の強い上気道症状、目の充血を呈して発症します。(カタル期)高熱が数日持続し、一旦解熱傾向となりますが、再度発熱します。(二峰性発熱)その後、皮疹が出現し、解熱傾向となり回復します。麻疹の皮疹の特徴は、図のように紅斑が全身に拡大し、融合傾向を示します。解熱後には皮疹は色素沈着を残します。潜伏期間は10〜12日で、空気感染で伝播するウイルスのため、非常に感染力が強いです。乳幼児の感染では重症化リスクが高いとされています。ワクチンの感染予防効果が高いので、ワクチン接種はとても重要です。
登園・登校について
発疹に伴う発熱が解熱した後 3 日を経過するまでは出席停止となります。ただし、病状により感染力が強いと認められたときは、さらに長期に及ぶ場合もあります。
風疹
風疹ウイルスによる感染症です。発熱、発疹、目の充血、耳介後部、頸部リンパ節腫脹が主な症状です。発熱を伴わない時もありますが、発熱を伴う場合は、発疹はほぼ同時期に出現します。発疹は図のように直径2〜5mm程度の細かい紅斑で、顔面から始まり体幹、四肢に拡大します。融合傾向を示さず、3日程度で皮疹は消退します。風疹は比較的軽症ですが、妊娠初期に妊婦が感染すると、胎児に感染して先天性風疹症候群を発症する場合があり、大きな問題です。その予防のために風疹の流行が起きないよう社会全体でワクチン接種を進めることが大切です。
登園・登校について
発疹が消退するまで出席停止となります。
りんご病
ヒトパルボウイルスB19による感染症です。通常経気道的に感染し、感染1週間後に小児では軽い感冒症状が起こる場合があります。その後1週間くらいすると図のように両頬に平手打ち様の紅斑、四肢の網状紅斑が出現します。数日で発疹は自然に消退します。発疹が出現しないと診断ができない疾患ですが、発疹が出現した時は、ウイルス量は少なく、他者への感染のリスクがないため、全身状態がよければ登園・登校できます。
多形紅斑
感染症の病原体や薬剤に対するアレルギー反応で起こる皮膚症状で、小児では感染症が原因になることが多いです。紅色丘疹で始まり、遠心性に拡大して類円形の境界明瞭な紅斑になります。典型例では周囲が浮腫により堤防状に隆起し、中心が陥凹します。その形状から標的状病変(target lesion)と呼ばれています。(図)皮疹の分布には左右対称性があります。原因となる感染症には、マイコプラズマ肺炎、溶連菌、ヘルペスウイルス、エンテロウイルス(夏かぜ)などがあります。
水疱の皮疹が出る感染症
水痘
水痘帯状疱疹ウイルスの初感染で図の様な発疹が出ます。発熱は伴わない場合もあります。皮疹の経時的な変化としては、最初は小さな掻痒を伴う紅斑が出現し、1日くらい経つと同部位は水膨れ(発赤を伴う水疱疹)になります。その後水疱は白濁して、水疱は潰れて乾き、痂皮化します。次々に皮疹が出るため、時間が経つと発赤、水疱、痂皮と時期の異なる皮疹が混在するのも特徴的です。治療は、水痘に対しては抗ウイルス薬があり、内服治療が可能です。空気感染で伝播するため、非常に感染力の強いウイルスです。免疫力の低下している状態(乳児や免疫不全の状態にあるお子さん)では重症化リスクが高いので注意する必要があります。(クリニックでの感染対策として、本疾患が疑われる場合は発熱外来の受診をお願いします。)
登園・登校について
全ての発疹がかさぶたになったら登園・登校できます。
手足口病(小児の感染症の項もご参照下さい)
皮疹は図のような水疱疹(典型的には木の葉状)、または小紅色疹が特徴で、皮疹は主に手掌、足底、膝、臀部に分布するのも特徴的です。その他、典型的には口腔内には口内炎を伴います。
伝染性膿痂疹
夏期に多い皮膚感染症で、黄色ブドウ球菌や溶連菌が原因菌になります。小児は黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌率が高く、この部位が感染源になることが多いです。こどもは鼻を触るくせがありますが、その触った手であせもや虫刺されなどのかゆい部分を引っ掻くことで菌が傷口から侵入して感染します。菌のついた手で色々な部分を引っ掻くと皮疹は拡大します。(その様子からとびひ(飛び火)と呼ばれることがあります。)細菌感染症のため、抗菌薬で治療します。皮疹の状況や皮疹の範囲によって外用、内服を選択します。かゆみにより引っ掻くため、かゆみを抑える薬を併用する場合があります。こどもの手に細菌が付着しているため手洗いをすること、かゆみなどで病変部は触りやすいので、ガーゼなどで覆った方が良い場合もあります。
登園・登校について
病変が広範囲の場合や発熱など全身症状を伴う場合は学校休んで治療する必要がありますが、そうでない場合は病変部を外用処置して、きちんと覆ってあげれば、学校を休む必要はありません。
伝染性軟属腫(水いぼ)
伝染性軟属腫ウイルスによる感染症で、皮膚に小さな白っぽい光沢のあるイボができます。図のようにイボの上部の中央部にくぼみがあるのが特徴です。皮疹の特徴で診断します。自然治癒が望めますが、時間を要します(半年〜1年程度)。イボの数が少なければ専用ピンセットで摘除する場合があります。登園・登校に制限はありませんが、浸出液がでている場合は皮疹部を被覆します。
その他
じんま疹
じんま疹とは一過性の膨隆疹(図参照)で、強い痒みを伴います。原因は特定できないことがほとんどですが、寒暖差などの物理的刺激、感染症、食物、薬剤などが原因になることがあります。小児では感染症に伴いじんま疹が出現することが多く、この場合は原因が持続するため数日間じんま疹が消退、出現を繰り返します。治療としては抗ヒスタミン薬がじんま疹に対して、また痒みに対して効果的です。内服でおさまらない痒みに対しては、痒みのあるところを冷やすことも一つの方法です。
川崎病
小児で頻度の高い血管炎症候群です。原因は不明ですが、多くは感染症などが契機で起こることが多いです。図のように発熱のほか、目の充血、口唇の発赤、発疹、頸部リンパ節腫脹、手足の発赤や腫脹などの症状を伴います。これら6症状のうち5症状がそろうと、川崎病と診断されます。小児の発熱を伴う発疹症では、常にこの疾患の可能性を考慮する必要があります。治療は点滴による免疫グロブリン療法が主体であり、入院での治療が必要になります。症状から、川崎病を疑った場合は入院治療が必要になるため連携医療機関にご紹介します。
全ての図は生成AI(ChatGPT)を用いて作成したイメージです。