過敏性腸症候群(IBS)は、英語の"Irritable Bowel Syndrome"の頭文字をとった病名です。過敏性腸症候群は便通異常(便秘や下痢)を伴う腹痛が度々起き、慢性的に持続する病気です。過敏性腸症候群は学童期以降に発症し、症状の程度の差はありますが、有病率は10〜15%と頻度の高い病気です。症状によっては日常生活に支障をきたし、不登校などの原因になります。お子さんの症状で疑われる場合は、お気軽に当院にご相談ください。
以下ではIBSを正しく理解して頂くためのポイントを解説します。
定義
IBSは、お腹の痛みや不調が数ヶ月以上続き、それに伴って便秘や下痢などのお通じの異常(排便回数や便の形の異常)がみられる病気です。大腸に炎症などの器質的な病気がないことが前提となります。
診断基準
IBSの診断には、国際的に最も広く用いられている「ローマⅣ基準」が使われます。 診断基準は以下の通りです
- 最近2ヵ月の間に、週に1日以上にわたってお腹の痛みが繰り返し起こる。
その痛みが下記の1項目以上の特徴を示す
- 排便に関連する
- 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 症状とともに便の形状(見た目)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
- 便秘のある小児では、便秘の改善では症状が消退しない(改善する場合は便秘と考える)
- 適切な医学的評価を行い、症状が他の疾患では説明できない
原因
IBSの原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
ストレス
IBSでは、不安な気持ちになるストレスは、大腸の収縮運動を激しくしたり、痛みを感じやすい知覚過敏状態を引き起こしたりします。脳から腸へ向かう信号を強くし、自律神経や内分泌系を刺激して腸の運動を異常にする要因となります。
感染性腸炎
細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった後、IBSになりやすいことが知られています。これは、感染によって腸に炎症が起き、腸の粘膜が弱くなったり、腸内細菌の状態が変わったりすることで、腸の運動や知覚機能が敏感になるためです。
食物
食物の種類や摂取方法によっては、腸から脳へ向かう信号を強め、知覚過敏状態を引き起こすことがあります。
腸内細菌
ある種の腸内細菌は、腸にごく軽度の炎症を起こし、粘膜を弱らせることでIBSを発症しやすくすると考えられています。
病態生理
IBSでは、脳と腸がお互いに通信する信号が両方とも強くなっています。
脳腸相関の異常
食べ物を消化・吸収し、不要なものを排泄するために、腸の収縮運動と変化を感じ取る知覚機能が必要ですが、これらは脳と腸が通信し合うことで制御されています。IBSではこの連携に異常が生じます。
知覚過敏
健康な人では強い刺激でないと腹痛を感じないのに対し、IBSの患者さんでは弱い刺激でも腹痛が起こってしまう知覚過敏の状態が特徴的です。
診断
IBSの診断は、まず腹痛や便通異常が繰り返し起こっている方が対象となります。
器質的疾患の除外
クローン病や潰瘍性大腸炎などの病気がないことを確認することが重要です。血便、発熱、予期せぬ体重減少、異常な身体所見などの警告症状・徴候がある場合は精査が必要なため、連携医療機関にご紹介します。
通常検査
警告症状や危険因子がない場合でも、血液検査、尿・便検査、腹部X線検査などの通常検査を行い、甲状腺機能異常症などの他の病気を除外します。
これらの検査で他の疾患が否定された場合に、ローマⅣ基準に基づいてIBSと診断されます。
治療法
IBSの治療は、生活習慣の見直しをするとともに薬物療法が行われます。
生活習慣の改善
- 規則正しい食事・睡眠・排便習慣
- ストレスと減らす工夫(家庭、学校での環境整備)
- IBS症状を誘発しやすい食品(脂肪の多い食事、香辛料、カフェイン、乳製品など)があれば摂取を控える。
- 適度な運動を行う。
- ヨーグルトなどの発酵食品や、便秘型の場合は食物繊維の多い食品が推奨されます。
薬物療法
消化管運動機能調節薬(腸の運動を整える薬)、プロバイオティクス(ビフィズス菌や乳酸菌など)、高分子重合体(便の水分バランスを調整する薬)が用いられます。これらは下痢型・便秘型のどちらにも使われます。漢方薬などが使われることもあります。