食物アレルギーはアレルギーマーチの初期に発症する疾患で乳幼児期に発症することが多いです。そして、近年増加傾向にあり、離乳食が始まり、様々な食材を新たに始めるにあたっては不安を感じている保護者の方も多いかと思います。乳児期に発症する食物アレルギーの原因としては卵、牛乳、小麦、大豆の頻度が多いです。これらは耐性獲得する(食べられるようになる)割合が高く、食物アレルギーを克服するためには、診断後に適切に食事指導を行うことが重要です。当院では、食物アレルギーが疑われるエピソードを正しく評価し、これまでの診療経験に基づいて検査結果を含めてリスク評価し、適切に食事指導をご案内しますので、お気軽にご相談下さい。
以下では食物アレルギーを正しく理解して頂くためのポイントを解説します。
食物アレルギーの定義は「食物によって引き起こされる抗原(食物)特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象(図1)」です。免疫学的機序の証拠になるのは、血液検査での食物特異的IgEの検出で、このため血液検査を行います。(IgE非依存性のタイプはありますが、後述の通り発症時期や症状に特徴があるので、食物特異的IgEが検出されないことが診断に重要になります。)

食物アレルギー診療ガイドライン2016
分類
食物アレルギーにはいくつか種類があります。(表1)発症年齢や食物摂取後に症状が出るまでの時間などで、お子さんの食物アレルギーがどのタイプのか見当をつけることができます。
表1

食物アレルギーの診療の手引き2020
消化管アレルギー
新生児、乳児期に発症する消化管アレルギーは、食物摂取から症状が発症するまでの時間が2〜4時間と長く、誘発症状は嘔吐、下痢、血便など消化器症状が主であり、食物特異的IgEが検出されないことが重要な所見です。
アトピー性皮膚炎
乳児期に発症するアトピー性皮膚炎の一部で、食物アレルギーが関与している場合があります。外用薬でコントロールがうまくいかない場合は、原因食品を特定し、除去することで、外用薬によるコントロールが改善する場合があります。
即時型アレルギー
食物アレルギーのタイプとしては頻度が高く、どの年齢でも発症する可能性がありますが、表2で示されるように、乳幼児早期での発症頻度が最も高いです。また、新規発祥の原因食物は表3で示されるように、年齢によって頻度が異なります。
表2

食物アレルギー診療ガイドライン2021
表3
食物アレルギー診療ガイドライン2021
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
原因食物の摂取のみ、運動のみではアレルギー症状の誘発は認めませんが、このタイプでは原因食物を摂取後に運動することでアレルギー症状が誘発されます。(ただし、再現性が乏しいのが特徴です。)学童期以降に新規発症することが多く、学校での給食後の運動が初回のエピソードになることが多いです。
口腔アレルギー症候群
口唇、口腔、咽頭粘膜を中心として症状は誘発されるタイプです。花粉感作があり、花粉と食物の交差反応で起こる花粉食物アレルギー症候群ではこのタイプに属することが多いです。多くは原因物質が加熱や消化で抗原性が失われるため、口腔内症状のみにとどまります。また、加工品や加熱処理では症状が誘発されません。ただし、一部では口腔内症状のみでなく全身症状に拡大する場合もあるため注意が必要です。
アレルギー症状の種類と重症度
即時型アレルギーでは、多くは食後2時間以内にアレルギー症状が出現しますが、表4で示される通り、出現する症状は多彩です。症状ごとの重症度を表5に示します。食物アレルギーが疑われ、中等症以上の症状を認めた場合は救急要請が必要です。
表4
食物アレルギー診療ガイドライン2021
表5

食物アレルギー診療ガイドライン2021
診断
食物アレルギーの検査には血液検査のほか、皮膚プリックテスト、経口食物アレルギー負荷試験があります。このうち、確定診断には経口食物アレルギー負荷試験が必要です。食物アレルギーが疑われるエピソードがある場合は被疑食品を主として、花粉食物アレルギー症候群が疑われる場合は花粉抗原を含めて血液検査で食物特異的IgEを評価します。食物アレルギーが疑われるエピソードがなく、血液検査で食物特異的IgEが検出され、その食物が未摂取の場合は皮膚プリックテストや経口食物負荷試験での評価が必要です。当院では、血液検査、皮膚プリックテストが可能です。これらの結果で、診断や治療のために食物経口負荷試験が必要と判断した場合は専門医療機関にご紹介します。
アレルギー症状に対する治療
表1のアレルギー分類で消化管アレルギー以外はIgE依存型です。IgEを介するアレルギー反応は以下の機序で起こります。皮膚粘膜表層にいる肥満細胞はIgE受容体を持ち、食物抗原特異的IgEがあると、肥満細胞の表層にIgE抗体が結合します。このような状態で体内に食物抗原が入ると、肥満細胞の表層のIgEに食物抗原が結合して、肥満細胞が活性化します。活性化した肥満細胞は様々な物質を放出します。その中には主にヒスタミンが含まれます。放出されたヒスタミンの作用で血管は拡張し、血管の壁に隙間ができることで血液の液体成分が漏れ出ることで腫れが生じます。皮膚の表層の血管で起これば蕁麻疹、皮膚の少し深い血管で起これば浮腫として症状が出ます。(図2)
アレルギー反応はこの様な機序で起こるため、治療の主体は抗ヒスタミン薬になります。軽症のアレルギー症状であれば抗ヒスタミン薬の内服で症状は比較的速やかに改善します。全身の多くの血管で壁に隙間が生じると、血液が血管内に保持できなくなるため、血圧低下が起こります。(この状況がアナフィラキシーショックです)この状況に対しては拡張した血管に対して血管収縮作用のあるアドレナリンの治療が必要です。このアドレナリンの自己注射薬がエピペン®です。
図2

図は生成AI(ChatGPT)を用いて作成したイラストです。
アナフィラキシー
アナフィラキシーの原因には食物、薬剤、昆虫刺傷などがあります。食物アレルギーの場合、多くは食後2時間以内にアレルギー症状が出現しますが、診断基準は図3に示される2つの基準のいずれかを満たす場合です。
診断基準の1:表4で示されるように即時型食物アレルギーの症状として皮膚症状の頻度は高く、皮膚症状に重度の呼吸器症状、消化器症状、循環不全症状のいずれかを伴った場合に診断されます。
診断基準の2:皮膚症状を伴わない場合でも、アレルゲンの可能性に高いものに曝露された後に、血圧低下(循環不全症状)または重度の呼吸器症状を発症した場合に診断されます。
図3
アナフィラキシーガイドライン2022
アドレナリン自己注射(エピペン®)
アナフィラキシーの際のショックを予防する薬です。(図4)
用量は2種類あり、体重15kg以上30kg未満では0.15mg、30kg以上では0.3mgを使用します。
図4

エピペンは、常時患者本人のそばにあること、使用方法、使用のタイミングを理解していることが重要です。
当院では、処方の際にご案内します。
食事指導
乳幼児期に頻度の高い卵、牛乳、小麦、大豆を原因とした食物アレルギーは、乳幼児期には比較的耐性獲得しやすいとされています。早期から少量ずつでも摂取することで耐性獲得の確率が上がるとされています。摂食歴があり卵、乳、大豆、小麦は少量の摂取が可能であれば、当院では、これまでの診療経験を活かして自宅で安全に摂取量が増量できるように食事指導しています。